愛知県弁護士会が発した「ロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻と核兵器による威嚇に対して強く抗議する会長談話」について

愛知県弁護士会の会長談話

愛知県弁護士会は、2022年3月2日、上記タイトルの会長談話を発出した。

その全文は、以下のとおり。

「本年2月24日、ロシア連邦がウクライナに対して大規模な軍事侵攻を行いました。さらに27日には、プーチン大統領が、核戦力を念頭に抑止力を特別警戒態勢に引き上げることを国防相などに命じたと報道されています。

 国際連合憲章2条は、すべての加盟国に対し、「国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない」こと、「その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」ことを求めています。この国際連合憲章は、人類が過去に繰り返した戦争の過ちを反省し、戦争の惨害を終わらせるとの強い決意のもとに調印したものです。

 今回のロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻は、国際連合憲章に正面から違反し、戦争の惨害を繰り返すものにほかならず、決して容認することは出来ません。

 また、核兵器禁止条約は、核兵器の使用が「壊滅的で非人道的な結末」を招くものであり、「武力紛争の際に適用される国際法の諸規則、特に国際人道法の諸原則及び諸規則に反する」と定めています。

 プーチン大統領による核兵器を用いた威嚇は、このような核兵器の全面的廃絶に向けて取り組んでいる国際社会の潮流に反するものであり、強い非難に値します。

 とりわけ、我が国は唯一の被爆国であり、人類の滅亡を招く核兵器が使用されないよう世界に強く訴える責務があります。

 日本国憲法は、日本国民が恒久の平和を念願し、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求すること、また、全世界の国民が平和のうちに生存する権利を有することを謳っており、我々弁護士はかかる日本国憲法の下において、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命としています。

 当会は、このような弁護士の使命のもと、今回のロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻と核兵器による威嚇に対して強く抗議するとともに、日本政府が国際秩序に従った紛争解決に向けて更なる努力をすることを求めます。」

愛知県/会長談話(ウクライナ侵攻)20220302

衆議院の非難決議

衆議院は、2022年3月1日、「ロシアによるウクライナ侵略を非難する決議」を出している。

その内容は、以下のとおり。

「ウクライナをめぐる情勢については、昨年末以来、国境付近におけるロシア軍増強が続く中、我が国を含む国際社会が、緊張の緩和と事態の打開に向けて、懸命な外交努力を重ねてきた。

しかし、二月二十一日、プーチン・ロシア大統領は、ウクライナの一部である、自称「ドネツク人民共和国」及び「ルハンスク人民共和国」の「独立」を承認する大統領令に署名し、同二十二日、ロシアは、両「共和国」との間での「友好協力相互支援協定」を批准した。そして、同二十四日、ロシアは、ウクライナへの侵略を開始した。

このようなロシアの行動は、明らかにウクライナの主権及び領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反であり、国連憲章の重大な違反である。

力による一方的な現状変更は断じて認められない。この事態は、欧州にとどまらず、日本が位置するアジアを含む国際社会の秩序の根幹を揺るがしかねない極めて深刻な事態である。

本院は、ロシア軍による侵略を最も強い言葉で非難する。そして、ロシアに対し、即時に攻撃を停止し、部隊をロシア国内に撤収するよう強く求める。

本院は、改めてウクライナ及びウクライナ国民と共にあることを表明する。

政府においては、本院の意を体し、ウクライナに在住する邦人の安全確保に全力を尽くすとともに、国際社会とも連携し、制裁を含め、事態に迅速かつ厳格な対応を行い、あらゆる外交資源を駆使して、ウクライナの平和を取り戻すことを強く要請する。

右決議する。」

愛知県弁護士会の会長談話の感想

弁護士会は、会長声明や会長談話をしばしば出しますが、どちらかというと身内寄りのテーマが多い嫌いがある。

ただ、戦争は最大の人権侵害であり、人権擁護を社会的使命とする弁護士が加入する団体として、比較的早く、今回のロシアのウクライナへの侵略に対して反対の立場を表明したという意味では評価できる面がある。

ただ、内容面でいうと、いくつか問題点があると思う。

① 私の理解でいうと、「会長談話」は「会長声明」よりもランクが低いと位置づけられている。
  しかし、強く反対の立場を表明するためにも「会長談話」の形ではなく、「会長声明」として表明すべきではなかったか。

② 弁護士会の会長談話は、「軍事侵攻」という表現を用いている。これに対して、衆議院の決議は「侵略」という表現を用いている。この2つの言葉を比較すると、「軍事侵攻」は「侵略」という言葉と比べると許されない行為であるというニュアンスが弱い。
  しかし、ロシアが開始した戦争は、最も強い表現で非難するべきであり、そのためには「侵略」という表現を用いるべきであった。

③ 弁護士会の会長談話は、ロシアの軍事侵攻と核兵器による威嚇が混在しており、正直分かりにくい。
  衆議院の決議のように、ロシアの侵略を端的に非難する方がよかったと思う。