令和4年度の税制改正大綱固まる~税理士業界で話題の電子帳簿保存法についても軌道修正図られる

岸田内閣になっての初めての税制改正大綱

毎年11月、12月頃になると、与党内で翌年の税制改正について議論がなされ、その結果が税制改正大綱として公表されます。

これはまだ法律が改正される前の段階ではありますが、公表された税制改正大綱の内容で実際に改正されることが多いので、多くの関係者の注目を集めます。

今年の税制改正大綱では、個人の分野では住宅ローン減税がどうなるかが注目されていました。

ただ、個人的に注目したのは、令和4年1月1日から電子取引で受領した領収書のPDFデータなどの保存を義務付けることになっていたのですが、それが実質的に延期されることになったことでした。

【朗報】領収書のPDFデータの保存義務は実質的に延期に

税理士業界では、今年になって電子帳簿保存法の改正が話題になっていました。

特に問題となっていたのは、令和4年(2022年)1月1日からPDFデータで受け取った領収書などを事業等を行う者は保存しなければならないことになっていたことでした。

どういうことかというと、個人事業主は、経費にするため色々な物を買ったりしますが、そのときに受け取ったレシートや領収書を保存しなければいけません。

ただ、保存しなければならないと規定されているのはレシートや領収書を「紙」で受け取った場合です。



ところが、インターネット上のサイトで物を購入したときには、「紙」の領収書は発行されず、領収書をPDFデータなどの形式でもらうことがあります。
このようにレシートや領収書をデータでもらった場合については、これまで保存義務がなかったので、保存しなければならないようにしようという改正がなされました。

それが令和4年(2022年)1月1日から施行されることになっていました。

電子帳簿保存法の規定に従って、領収書等のデータを保存しようとすると、相当面倒な作業をしなければならないことになり、率直に言って、悪法だと思っています。

現在は、領収書等のPDFデータをもらった場合、税理士さんに渡すために印刷している人も多いと思いますが、印刷したものを保存しているのではダメで、PDF等のデータそれ自体を保存しなければならないというのです。
しかし、なぜ印刷したものを保存するのではダメなのかがよく分からないです。

また、保存するというのは、具体的には、パソコンで専用のフォルダを作って、そこにデータを入れて保存するということです。

そのためには、例えば、クレジットカードの利用明細のデータを保存しようとする場合、クレジットカード会社のサイトにパスワード等を打ち込んで、会員専用ページにアクセスし、利用明細のページを探して、そこからダウンロードをするといったことになります。

これ自体が面倒な作業なのに、それ以外にもAmazonなど色んなところからデータを入手しなければいけなくなるので、相当負担が大きいです。

メールで送られてくるものもありますので、漏れずに保存しようとするのは相当難しいです。

さらに厄介なのは、税務調査をするときに税務署がデータを探しやすいようにファイル名を変えろというのです。

これは税務署の都合以外の何物でもないという感じがしますが、個人事業主が税務調査を受ける割合というのは相当低く、何十年も事業をしていても、個人事業主が1回も税務調査を受けないのはむしろ普通です。
一生に一度受けるかどうか分からない税務調査のためにファイル名を変えるという超面倒な作業をするかというと、多くの人はしないのではないかと思うのです。

かなり問題があることが令和4年1月1日から義務付けられようとしており、しかも多くの方に知られてもいなかったのですが、その状態で義務化を始めるのは、流石に問題だと政治家も認識したのか、税制改正大綱では次のような事項が盛り込まれ、軌道修正が図られることになりました。


【電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための宥恕措置の整備】
 電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存制度について、令和4年1月1日から令和5年12月31日までの間に申告所得税及び法人税に係る保存義務者が行う電子取引につき、納税地等の所轄税務署長が当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存をすることができなかったことについてやむを得ない事情があると認め、かつ、当該保存義務者が質問検査権に基づく当該電磁的記録の出力書面(整然として形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る。)の提示又は提出の求めに応じることができるようにしている場合には、その保存要件にかかわらず、その電磁的記録の保存をすることができることとする経過措置を講ずる。
(注1)上記の改正は、令和4年1月1日以後に行う電子取引の取引情報について適用する。
(注2)上記の電子取引の取引情報に係る電磁的記録の出力書面等を保存している場合における当該電磁的記録の保存に関する上記の措置の適用については、当該電磁的記録の保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意し、引き続き保存義務者から納税地等の所轄税務署長への手続を要せずその出力書面等による保存を可能とするよう、運用上、適切に配慮することとする。

難しい言葉で書かれていますが、データで保存するのが難しいところは、データを印刷したものを保存していればいいよということであって、実質的には電子帳簿保存法の規定の施行が延期されたと受け止めています。