コロナ給付金4630万円誤送金問題について

山口県阿武町で一人の住民に4630万円を誤って振り込んでしまい、
その方が返還を拒んでいると報道されています。

この民事上の問題を考えると、
阿武町が住民に4630万円を振り込んだのは、単なるミスであって、
振り込まれた人がもらえるわけではありません。

民法上このようなことを「不当利得」と呼んでおり、
阿武町は誤振込した住民に返すよう請求できます。
このような請求は、不当利得返還請求権と呼んでいます。

返還を拒否している場合はどのように対応するべきか

民事の手続には、話し合いによる解決を目指した「調停」というものもありますが、
今回は金額が多額であり、また、返還を拒否する態度を示していることから、
調停を申し立てても話し合いによる解決はあまり期待できないように思われます。

そのため、通常の民事裁判に当たる「訴訟」を提起することが普通だろうと思います。

ただ、民事裁判を提起しても、実際に判決が出るまでには、時間がかかります。

ひょっとすると、まだ振り込んだ預金口座にお金が残っていても、判決を得るまでに
時間がかかると使われてしまうかもしれません。

そのようなときは、判決が出る前に預金口座を仮に差し押さえて、お金を引き出せない
ようにする方法があり、これを「仮差押え」と呼んでいます。

仮差押えは、裁判所に申立てをして、裁判所が法律の要件を満たすと判断したら、
仮差押えの決定が出されます。
もちろん、ケースバイケースですが、特に問題がないケースは申立てをした翌日に
決定が出されることもあります。
その決定は銀行等にも届き、それを受け取った銀行等は預金を動かせないようにすること
になります。

そのような申立てをしても、既に預金が動かされていて、仮差押えが功を奏しないことも
想定されます。

誤振込をした預金口座から別の自分名義の口座に移動させた可能性も否定はできないとい
う立場からすると、移動先を調べるという発想になります。

ただ、金融機関に対し、預金の移動先を教えるよう求めても、個人情報であることを理由
に回答を拒まれると予想されます。

なので、弁護士会照会などの法的な手段を用いて、回答を求めることになるのではないか
と思います。

誤振込を受けた人が誤入金されたお金を借金の返済などお金を使っていた場合には、返済先
に対して、返すように求めるのは一般的には困難です。