弁護士の横領問題を考える

弁護士が2億4000万円超の横領の疑いとの報道

今日、ネットを見ていたら、熊本弁護士会に所属する弁護士が
2億4000万円超を横領した疑いとのニュースが出ていました。

私が所属する愛知県弁護士会でも、昨年、清算中の会社の預金1億5000万円を
横領したという容疑で弁護士が逮捕されたということがありました。

昨年、この事件のことが報道されたときは、事務所の経費で数百万円を使った
ということなら、まだしも、1億円を超えるという金額になると、
事務所経費で使用したということでは説明がつかないので、
理解しがたいという思いでした。

報道によると、熊本のケースは、弁護士会の調査に対して、当該弁護士は
ほぼ競馬に使用したと説明しているようですが、
競馬で2億を超えるお金をですか・・・。

不祥事への対策

弁護士がお客様のお金を横領するということがしばしば生じるため、
弁護士会は2013年に「預り金等の取扱いに関する規程」を制定し、
弁護士は、預かる預金は運転資金とは別々に管理しなければならない
ことになりました。

今、銀行で「〇〇商店」といった自分の名前以外の屋号などが入った
口座は作成できませんが、弁護士の預り金口座に使用するためであれば、
「預り口 弁護士 〇〇〇〇」という名義の口座が作成できます。

しかし、たとえ「預り口 弁護士 〇〇〇〇」という名義の口座でお客様
のお金を管理していたとしても、通常の口座と同様に口座からお金を
引き出すことは可能ですので、
事前に不祥事を防止することは期待できません

全国の弁護士会の状況は承知していませんが、
私が所属する愛知県弁護士会では、抜き打ちで監査をするということは
行われていません。

弁護士が横領した場合の補償

弁護士が横領した場合ですが、当該弁護士が被害者に対して、賠償しなければなりません。
当たり前ですね。

しかし、何百万円ということであれば、賠償するということも可能かもしれませんが、
1億とか2億となると全額の賠償は期待できません。

弁護士は、弁護士賠償責任保険に加入していることが普通ですが、
横領した場合にこのような保険から被害が回復されるということはありません。

日弁連は、2017年から「依頼者見舞金制度」を作って、弁護士が横領したケースについて、
一部見舞金として支給して、被害を少しでも回復できるようにしました。

私はこの制度の詳細はよく知らなかったのですが、制度の中身を見ると、
同じ弁護士に被害者が複数いる場合は、弁護士1人につき総額2,000万円が上限
になるということです。

2億4000万円も横領となると、依頼者見舞金制度で見舞金が出たとしても、
被害額の1割にも満たないという計算になります。

現在の制度を前提とした不祥事対応には限界がある

じゃあ、弁護士が横領するという不祥事に対して、有効な手立てがあるか
というと、
現在の制度を前提とすると、事前に防止するのがなかなか難しいのが現状
だと思います。

後見案件の場合には、後見制度支援信託といって、日常生活に必要となるお金
を超える預金は、信託銀行に預けて、家庭裁判所の指示書がないと
払い戻し等ができないという仕組みがあります。
裁判所の指示書がないと、お金を引き出せないので、後見人の不祥事を防止
できるというわけです。

裁判所が裁量で選任する不在者財産管理人や相続財産管理人にも、後見制度
支援信託のような仕組みを作ることが必要かもしれません。

このようなことは今後しかるべくところで検討されるかもしれませんが、
弁護士が多額のお金を預かって、それを通常の預金口座と同様に引き出すことが
できるということ自体が問題のような気がします。