休業要請により休業している人の家賃負担を減らすべき
経費の割合が高い家賃と人件費
新型コロナウイルスの影響が長期化しています。
特に飲食店は、売上げが8割、9割減というところも多いようです。
持ち帰りをできるようにする努力をされているところもありますが、それで夜の売上げを回復することは実際上はできないですので、飲食店は相当苦しい状況だと思います。
経費の中で固定費となると、家賃と人件費が支出の多い2大項目といえます。
人件費については、雇用調整助成金という既存の枠組みがあります。
これに対して、家賃についてはそのような既存の枠組みがないので、苦慮されていると思います。
自治体の中には休業要請に応じたところには、一定の給付金を支給することにしているところがあります。
このような給付金は飲食店を経営している事業主の生活費として使われるべきだと思うのですが、
これがそのまま家賃の支払いに回ってしまうと、大家さんを支援するという結果になります。
飲食店はチェーン店のようなところもありますが、個人でやっているところも多いです。
また、飲食店は、利益が少ない業種です。次のグラフは私が国税庁が公表している所得の資料を基に作成したものですが、個人で飲食店を営んでいる方の所得がかなり少ないことが分かるかと思います。
他方、大家さんは不動産を所有しているという点で資力があります。
新型コロナウイルスによる損害を社会で公平に分担するべきでしょうから、大家さんが家賃を減額するという対応をするのが妥当です。
ただ、減額に応じない人に対しても対処するには、そのための法律を制定することが必要だと思います。
少し家賃を滞納したくらいでは明け渡しは求められない
家賃未払いを理由とする退去は、借主にとって不利益が大きいです。
そのため、さすがに1、2ヶ月程度家賃を滞納した程度では、大家さんが解除するので出ていけということは難しいです。
賃貸借契約書に1回でも家賃の支払いを怠ったら解除することができるという条項が入っていることがあります。
しかし、実際のところは裁判所はそれをそのまま適用することはなく、借主に有利に対処してくれます。
そのようなことも踏まえて、限りあるお金をどうするかを考えるのが妥当です。
賃料減額請求ができないか?
借地借家法には、次の条文があります。
(借賃増減請求権)
第32条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
このように、借地借家法には家賃を減額することができる仕組みがあるのですが、
どちらかというと長期的に家賃を減らすべき事情があるような場合に使うので、
新型コロナウイルスの場合にどの程度使えるのか不透明ですが、この条文を手掛かりにして、
賃料の減額を求めるということはありえるかもしれません。
日弁連が会長声明を出しました
5月1日、日弁連が、緊急事態宣言の影響による賃料滞納に基づく賃貸借契約解除を制限する等の特別措置法の制定を求める緊急会長声明を出しました。