【コラム】お金の使い方を考える
私は、弁護士として10年以上仕事をしてきました。
その中には、その人の財産にかかわる仕事をすることもありますので、他人の懐具合を見てきました。
その中でお金の使い方について、考えさせられることがあります。
お金を残し過ぎてしまった
相続の仕事をしていると、たまに必要以上の現金を残して亡くなったケースを見るときがあります。
遺産は、不動産は自宅があるのみで、それ以外は預貯金が主なものという場合で、何千万円の預貯金を残しているケース
自宅以外にも多数の不動産を保有している場合、相続税が多額になりますので、そのような場合は、現金を相応に残すことが必要です。
しかしながら、不動産が自宅のみであれば、その価格はたかが知れています。
相続税は、3000万円+600万円×法定相続人の数 が基礎控除額となりますが、自宅の土地建物だけであれば、基礎控除額の範囲で収まるのが普通です。
多額の預貯金を残したために、かえって、相続税が高くなり、国に払わなければいけない事態になっているのです。
それなら、生きているうちにもっと使えばよかったのに と思ってしまいます。
逆に収入が少ない人
私は、個人の自己破産の依頼を受けることがあります。
私が弁護士になったころよりも、世の中が厳しくなっていて、自己破産をして借金はなくなったけど、収入が少なくて大変な人が結構います。
中にはダブルワークをしている人もいますが、年齢を重ねると、ダブルワークはきつく、体調を崩さないか心配です。
シングルマザーの方の自己破産を受けたことがあります。
夫と離婚して、子どもがいるが、養育費の支払いはなし。
頑張って働いているが、給料が少なく、クレジットカードでキャッシングをしてしまい、それが積み重なって、支払えず、自己破産。
しばしば見かけるケースなのですが、たまに、こういう人に限って子どもが沢山いるのです。
少子高齢化の世の中ですので、子どもが沢山いるのはいいことなのですが、パートで働いても、給料はせいぜい10万~20万円程度。
児童扶養手当などを合わせても、日々の生活をしていくだけで精一杯の状態です。
お金があるところからないところにうまく流れない
多額の現金を残して亡くなった方の1000万円を、このシングルマザーの方が使えれば、1人くらい大学に進学させることができるかもしれない、そうすれば、その方の人生も変わるのではないか と思ってしまいます。
そう思うと、収入の多い人から税金を多く取って、それを収入の少ない人に公的扶助の形で回すということは必要です。
近年の個人所得税の税制改正は、高額所得者に対する税額控除を少なくして、税金を多く取るという方向ですが、それは妥当な価値判断だと思います。
また、ある程度お金を持っている人は、価値のあるものにお金を使うことも大切でしょう。
節約も大切なのですが、なんでも過ぎたるは及ばざるが如しです。