遺言を書いた方がいい場合はどのような場合か?

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相続人の仲が悪い

私も、これまで色々な相続のご依頼・ご相談を受けてきましたが、相続でもめる一番の原因は、相続人同士の仲が悪いことです。

仲が悪い人同士が話し合って遺産の問題を解決するには、大変な時間と労力を使わなけばなりません。

つまり、仲が悪く当事者同士で話合いをすることが難しいと、弁護士に依頼して家庭裁判所に調停を申立てなければならない場合があります。

調停も1年以上かかる場合もあります。また、遺産の多さや複雑さにもよりますが、弁護士費用もそれなりにかかります。

しかし、遺産の分け方を遺言で書いておけば、どのように分けるのかについて揉める必要はなくなります。

遺産の分け方が不公平ではないかという問題も生じ得ますが、遺留分を侵害しなければ遺言に書いたとおりに分けることになりますので、相続人も納得するしかありません。

不動産が多い

相続人同士の仲がそれほど悪くなくても、多くの不動産があると揉める原因になります。

不動産は金額が分かりづらいのと、どうしてもいい土地と悪い土地が出てくるので、分けるのは容易ではないからです。

最近は、「負動産」と言われるように、相続人が皆いらないという不動産もあります。その典型が空き家です。

また、不動産が多い場合は、相続税も多額になるため、相続税をどうやって納めるかという問題も生じます。

そのため、多くの不動産をお持ちの方は、納税資金も考慮して、遺言を書くことをオススメします。

相続人以外の人に財産を与えたい

例えば、今の法律では、内縁の妻には相続権はありません。

現在の日本は夫婦別姓は認められていないため、姓を変えないため、あえて事実婚を選ぶ方がいますが、法律上の婚姻関係がなければ、配偶者としての相続権はありません。

また、孫に財産を上げたい、社会貢献のために自分が亡くなったら慈善団体に寄附をしたいというケースもあります。

このように相続人以外に人に財産を分け与えたいと考えている場合には、遺言を書くのが有力な方法です。

遺産を与えたくない相続人がいる

子どもの中で、ひとり迷惑ばかりをかけるので、この子には絶対財産をやりたくないと考えているケースが典型例です。

このように、遺産を与えたくない相続人がいる場合には、遺言で他の相続人に遺産がいくように書くことが考えられます。

遺留分があることで全部与えないということができない場合もありますが、それでも財産を少なくすることはできます。

行方不明の相続人がいる

遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要ですので、行方不明の相続人がいると遺産分割協議を円滑に行うことができません。

遺産分割協議ができないと、相続税の申告・納付に支障を来す場合があります。

相続税を安くする特例の中には、遺産を誰に分けるかが決まっていないと適用できないものがあります。

そのため、行方不明の相続人がいても、遺言で分け方を決めておけば、遺産を円滑に分けることができますし、相続税の申告・納付もスムーズです。

子どもがおらず、兄弟や甥姪が相続人になる

近年は晩婚化の影響により結婚しない人が増えていますが、昔から生涯独身の人は少なからずいます。

生涯独身の人が高齢で亡くなる場合、兄弟姉妹や甥姪が相続人になることが多いですが、数が多いことがしばしばあるのと、住所も近くでないことが多いので、遺産分割協議をするのに苦労することが少なくありません。

また、兄弟姉妹が相続人になるケースの中には、認知症が進行して遺産分割協議ができない人がいるケースもあります。

第三順位の相続人の場合、遺留分の問題が生じませんので、お世話になった人に遺産をあげやすいので、遺言を書くのに適しています。

離婚していて前妻・前夫との間の子がいる

特に、男性が離婚して子どもを妻が引き取っていて、男性がその後再婚して子どもも生まれた場合、前妻との間の子と後妻との間の子は会ったことがないことも多いです。

そうなると、法律上は兄弟姉妹とはいえ、他人と同じですので、遺産分割をするのが大変なときがあります。

そのため、遺言で遺産の分け方を決めておく方がいいケースがあります。

会社を経営している

遺産の中に会社の株式があり、それを巡ってもめそうなときも遺言を書いておいた方がいいです。

誰が取得するのか決まらない場合、会社の経営に支障を来す場合があります。

まとめ

このように考えていくと、遺言を書いた方がいい方はかなりの数いるはずです。

あまりにも早く遺言を作成すると、その後、変更しなければならないケースも出てくるかもしれませんので、一概に早く書くのがいいとはいえません。

他方、年齢が高くなると、字を書くのが億劫になったりして、自筆証書遺言を書くのがかなり大変ということあります。

これは私の意見ですが、70歳を超えて、上記のようなケースに当てはまる方は、遺言を書くことを真剣に検討されたらいかがでしょうか。