諦めさせるのも仕事の一つ

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お客様の要望に沿えない場合

仕事をしているとお客様の要望に沿えないということは誰でも経験するでしょう。

会社勤めの方だと、会社の方針や決まりで実現できないということが多いかもしれません。

弁護士の場合もいくつかありますが、法律相談では次のことが問題となりやすいです。

① 法律上、お客様の要望に応えることができない又は著しく困難

② 経験上、お客様の要望にお応えできる可能性が低い

具体例

①は、例えば、お金を貸したけど返してくれないから、親から取れないと聞かれるときがあります。

しかし、親が連帯保証人になっていない限り、借りた本人ではなくその親に貸したお金を返せということはできません。

②は、例えば、小さい子どもがいる夫婦の離婚事件で、子どもは妻と生活していて、その生活状況にさしたる問題がないのに、夫が親権を欲する場合です。

このような場合、経験上、夫に親権が来る可能性は低いと言わざるを得ません。

では、法律相談の際、「親権は認められるでしょうか?」と質問されて、なんと答えるべきでしょうか。

A. 可能性が高いとは言えないかもしれませんが、可能性はあります。

B. なんとも言えません。夫、妻のどちらに親権を認めるかは裁判官が決めます。

C. 難しいかもしれません。

D. 認められる可能性は低いです。

E. まず、認められないから、諦めてもらうしかないです。

Aのような言い方は嘘ではありませんが、可能性が低いのに、このような言い方をすると、人によっては期待を持たせてしまう可能性があります。

Bは一見すると無難のように思えますが、相談される方にとっては頼りないと思われる可能性があります。

Eは、親権が欲しいと考えている方に親権は諦めろというと精神的ショックが大きすぎる可能性があります。

C、Dは悩みますが、最近は、どちらかとDのように言えるときはDのように言うべきではないかと思っています。

専門家としての助言を求められている

弁護士に相談するということは、法律の専門家に相談をして助言を得たいということです。

友人に相談するのとはわけが違います。

それがゆえに、一般の方にとって安くはない法律相談料をいただくのです。

安くない費用をお支払いいただく以上、経験から言えることはその方にとってマイナスなことでもはっきり言うべきだと思います。

上記のBの回答は、ある意味、正しい回答ではあります。

しかし、Bは言い方はよくないかもしれませんが、法律のことを少しかじった法学部生のような回答なんですよね。

誰でも言えそうな回答に価値があるのでしょうか。

生きた法の語り部として弁護士は助言を求められています。

そうである以上、経験上、相談される方の要望に応えがたい場合もはっきり助言するべきだと思います。

壁になることも必要

相談者の要望に応えられないことを伝え、諦めさせるのも弁護士の大切な仕事です。

藁にも掴もうとする方に力になれないというと、その方はとても残念そうな表情をします。

弁護士も、一種の無力感や罪悪感を感じます。

その罪悪感から逃れたいという思いから、曖昧な助言をする弁護士がいます。

しかし、できないことは諦めて次のステップに進ませるのも大切です。

 

まとめ

今日は少し長くなりました。

しかし、ここまでお付き合いいただいた方は、私のスタンスを少し理解していただいたのではないかと思います。